モンスター社員・問題社員を辞めさせる方法と3つのケース別注意点

やる気や能力がなく仕事に穴をあける、周りに迷惑をかけるなどのモンスター社員(問題社員)は、使用者側にとって大きな悩みの種になり得ます。

日本の労働法では、労働者を保護する観点から、使用者が労働者を解雇するためのハードルは非常に高くなっています。

何とかしてモンスター社員を辞めさせたいと思う場合には、法律の規定を踏まえて慎重に対応する必要があります。

この記事では、モンスター社員を辞めさせる方法や注意点などについて、専門的な観点から解説します。

モンスター社員(問題社員)とは?|特徴7パターン

モンスター社員(問題社員)とひと口に言っても、どのような問題を引き起こしているかについてはさまざまなパターンがあります。

まずは、事業者側が考える辞めさせたいモンスター社員の特徴について見ていきましょう。

①欠勤・遅刻・早退をする

上司や同僚にだまって欠勤・遅刻・早退をする社員は、仕事のスケジュールに穴をあける辞めさせたいモンスター社員(問題社員)であるといえるでしょう。

欠勤・遅刻・早退は就業規則上の禁止事項に挙げられているケースがほとんどであり、場合によっては懲戒相当と判断される可能性もあります。

②離席が多い

お手洗いなどの常識的な範囲の離席であれば問題ありませんが、長時間・頻繁に離席する社員については、労働時間を全うしていないモンスター社員(問題社員)であると判断されても仕方ありません。

就業規則上、労働者は労働時間中、職務に専念する義務を負っているのが通常です。

しかし、離席が多い場合には、労働者が職務専念義務に違反していると評価される可能性があります。

③仕事をしない

手が空いているのに仕事を断ったり、同僚に仕事を押し付けて自分はさぼったりする社員も、仕事のパフォーマンスを低下させるモンスター社員(問題社員)でしょう。

このような社員のせいで、周囲の業務負担が重くなってしまう場合もあるため、管理職がしっかりと目を光らせておく必要があります。

④仕事ができない・能力が著しく不足している

再三の注意・指導にもかかわらず、同じ単純なミスを繰り返すような、仕事ができない人は、辞めさせたいモンスター社員(問題社員)といえます。

能力が著しく不足しているモンスター社員(問題社員)には、会社の中で任せられる仕事がほとんどなくなってしまうため、使用者側としても対処に困ってしまうでしょう。

⑤協調性がない

周囲とほとんどコミュニケーションを取らず、報連相ができないなど協調性のない社員は、チームで動くことが重要な会社にとってはモンスター社員(問題社員)に当たるでしょう。

協調性がないモンスター社員(問題社員)は、周囲との不和の原因になったり、上司が把握しきれないところで取り返しがつかないミスが発生したりするなど、業務に重大な影響を及ぼすおそれがあります。

⑥上司の指示に従わない

自分のポリシーにこだわりすぎるあまり、上司の指示に従わない社員も、モンスター社員(問題社員)に当たり得ます。

会社組織はピラミッド型・上意下達型という側面があるため、上司の指示に正当な理由がなく従わない行為は、就業規則などに違反する可能性があります。

ただし、上司の指示が理不尽・不合理なケースもあり得るため、モンスター社員と即断する前に、社員の言い分も聞いてみるべきでしょう。

⑦パワハラなどを行う

周囲の同僚に対してパワハラを行う社員は、明らかに迷惑な辞めさせたいモンスター社員(問題社員)です。

使用者には、労働者が安全に職務を行えるような環境を整える義務(安全配慮義務)があるので、パワハラなどが職場で発生した場合には、厳正に対処する必要があります。

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モンスター社員への対応|合法的に退職させるための方法は?

モンスター社員(問題社員)には、できることであれば会社を退職してほしいところです。

モンスター社員を退職させる方法には、①退職勧奨と②解雇の2つがあります。

①基本的には退職勧奨によるべき

解雇の法律上の要件は非常に厳しいため、基本的にはモンスター社員(問題社員)の自主的な退職を促す「退職勧奨」の対応を取りたいところです。

退職勧奨により労働者が退職する場合、退職に関する労働者の同意があるため、後で労働者との間の紛争に発展する可能性がかなり低くなるメリットがあります。

②「解雇」は最終手段|要件はかなり厳しい

職務怠慢がひどいケースなどでは解雇による方法もありますが、日本の労働法では、使用者が労働者を解雇するハードルは非常に高くなっています。

まず、就業規則や「労働契約において定められている解雇事由」に該当することが必要です。

モンスター社員(問題社員)の行動については、就業規則や労働契約のどこかに抵触する場合が多いため、この点は比較的容易にクリアできるかもしれません。

一般には、使用者側が解雇を回避するための努力を尽くしてもなお、解雇が真にやむを得ないと認められる特段の事情がある場合のみ、解雇が認められると解されています。

たとえば、

・問題行動の悪質性
・注意や指導を十分に行ったかどうか
・配置転換などが可能だったか、配置転換を試みたか
・労働者に対して改善に必要な猶予期間を十分与えたか
・使用者側から労働者側に対して不適切な言動はなかったか

などを総合的に考慮した結果、使用者側に落ち度はないと認められるような場合には、解雇が正当なものとして認められる可能性が高いでしょう。

しかし、労働者側が反論をしてきた場合には紛争になることが必至ですし、会社が損害賠償責任を負ってしまうリスクをゼロにすることはできません。

そのため、解雇は最後の手段と認識したうえで、できる限り自主退職させることを目指す方が賢明です。

ケース別①:モンスター社員に退職勧奨をする場合の注意点

モンスター社員(問題社員)に退職勧奨をする場合に、使用者側が注意すべき点を解説します。

①無理矢理はNG

退職勧奨は、あくまでも労働者の自主的な退職を促すための働きかけです。

直接解雇を強要するような言動がなかったとしても、

・大人数で一人を取り囲むような形で威圧的な説得を行う
・閑職に追いやって仕事を与えない
・口頭やメールなどで人格攻撃を加える
・職場全員で労働者を無視する

など、パワハラに該当する行為が行われている場合には、退職勧奨に応じた自主退職が本当に任意のものであったのかについて疑義が生じてしまいます。

このような事態を避けるために、退職勧奨はリラックスした空間で、冷静な話し合いの形で行う必要があるでしょう。

②場合によっては「上乗せ退職金」を提案する

労働者側としても、自主的に退職に応じるには、退職に何らかのメリットを感じることができなければ難しいでしょう。

使用者側としては、労働者側に退職のメリットを提供するため、上乗せ退職金などを提案することも有効な手段です。

「モンスター社員(問題社員)になぜ上乗せ退職金を支払わなければならないのか」と憤りを感じる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、退職勧奨が長引いてしまえば、その分給料を支払い続ける必要がありますので、結果としてコストがかさんでしまいます。

上乗せ退職金などの効果で、早い段階でモンスター社員(問題社員)に自主退職してもらうことができれば、会社の側としてもコストや手間を削減することができます。

モンスター社員(問題社員)に対する退職勧奨の際には、会社側としては、目的達成のためにはある程度割り切った行動が求められます。

ケース別②:モンスター社員を解雇する場合の注意点

すでに解説したとおり、たとえモンスター社員(問題社員)であっても、使用者が労働者を解雇するハードルはかなり高いといえます。

それでも、モンスター社員(問題社員)が退職勧奨に応じず、一方で勤務態度は一向に改善しないなど、解雇が必要となる場合もあるかもしれません。

モンスター社員(問題社員)を解雇する際には、どのような点に注意をすれば良いのでしょうか。

①解雇は段階を踏む必要がある

モンスター社員(問題社員)に問題行動が見られたとしても、それを原因としていきなり労働者を解雇してしまうと、使用者側が解雇を回避する努力を怠っていると評価されてしまうおそれがあります。

そのため、非常に悪質な就業規則違反(犯罪など)の場合を除いて、口頭での注意・指導や、より軽い戒告や減給などの懲戒処分から行って段階的に様子を見ることをおすすめします。

②解雇理由の客観的合理性・社会的相当性を慎重に審査する

解雇理由には客観的合理性と社会的相当性が認められなければ、解雇が無効になってしまいます。

単に「就業規則や労働契約に違反しているから解雇して良い」とだけ考えるのは不適切です。

使用者側として解雇を回避するための注意・指導・配置転換その他の措置を十分に講じたかということを慎重に審査しましょう。

③事前に弁護士に相談してチェックを受けるのがおすすめ

モンスター社員(問題社員)の解雇については、判断を誤ってしまうと、後に労働者との間で深刻な紛争が発生してしまうリスクがあります。

そのため「労働問題に詳しい弁護士」に事前に相談を行い、モンスター社員(問題社員)を解雇する対応が可能かどうかについてアドバイスを求めることをおすすめします。

ケース別③:不当解雇と判断された場合の会社のリスク

モンスター社員(問題社員)を解雇したケースで、後に裁判などで解雇の客観的合理性または社会的相当性が認められないと判断された場合解雇が無効となってしまいます(労働契約法16条)。

その場合、使用者は労働者に対して法的責任を負担することになります。どのような責任を使用者が負担する可能性があるかについて解説します。

①復職を認めざるを得なくなる

解雇が無効になると、労働者は使用者の社員たる地位を失わなかったことになります。
そのため、労働者が希望すれば、職場に復帰させなければなりません。

しかし、ただでさえモンスター社員(問題社員)であった人が、いったん会社に爪弾きにされた後で戻ってきて、会社への貢献や周囲との円満な関係を期待するのはなかなか難しいでしょう。

こうなってしまうと、会社にとってはモンスター社員(問題社員)を解雇する前よりも、さらに状況が悪化してしまう可能性が高いと思われます。

②解雇期間の給与を支払う義務を負う(バックペイ)

不当解雇によって労働者が労働できなかった期間については、使用者は労働者に対して「対応する賃金」を支払う必要があります(民法536条2項第1文)。

紛争が長引けば長引くほど、モンスター社員(問題社員)に対して支払う空の賃金が増えてしまうため、使用者にとっては大きなリスクといえるでしょう。

なお、労働者がその期間に別の収入を得ていた場合には、平均賃金の4割を上限として、賃金から控除することができます。これを中間収入の控除といいます(民法536条2項第二文、最判昭和37年7月20日)。

③解雇が悪質なケースでは慰謝料も

解雇に際してパワハラが行われた場合など、解雇の中でも悪質なケースでは、バックペイとは別に慰謝料の請求が認められる場合もあります。

会社から突然解雇されてしまった場合、まずは不当解雇を疑いましょう。 不当解雇の場合、基本的には解雇の無効や、就労不能…[続きを読む]

まとめ

使用者がモンスター社員(問題社員)へ対処する方法については、労働者が労働法の規定により保護されていることを踏まえると、きわめて慎重な検討を必要とします。

モンスター社員(問題社員)に退職してほしい場合、基本的には退職勧奨の方法によることをおすすめします。

その際、強要行為やパワハラが行われることを防ぎつつ、労働者にとってもメリットのある提案をすることがポイントです。

退職勧奨が実らない場合は解雇も選択肢に入りますが、法律上の要件が厳しいため、安易な解雇は禁物です。

弁護士に相談しながら、解雇に法的な問題がないか、仮に労働者から反論された場合に再反論が可能かなどを、事前に十分詰めておいた方が良いでしょう。

モンスター社員(問題社員)にお悩みの会社は、弁護士にご相談ください。

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