債権譲渡の方法・対抗要件などをわかりやすく解説【民法改正にも対応】

債権譲渡は、債権回収の場面などで広く活用されています。

債権譲渡を法的に有効な形で行うには、契約締結や対抗要件の具備に関して、正しい知識を備えておかなければなりません。

今回は、債権譲渡の方法・対抗要件に関する民法上のルールを、2020年4月に施行された改正民法による変更点と併せてわかりやすく解説します。

1. 債権譲渡とは簡単に言うと

債権譲渡とは、譲渡人が有する債権を、譲受人に対して譲渡する取引・契約のことです(民法466条1項)。

債権譲渡が行われる場合、一般的に、譲渡人は早期に債権を現金化したいと考えています。

これに対して譲受人は、債権を額面よりも安く買い取り、回収によって利益を得たいと考えています。

簡単に言うと、これらの譲渡人・譲受人のニーズがマッチした場合に、両者の間で債権譲渡が行われるのです。

2. 債権譲渡がどんな場面で活用されるか

債権譲渡は、主に債権回収の場面でよく活用されます。

2-1. 弁済期の到来前に債権を現金化する

債権譲渡が行われるもっとも基本的なパターンが、「弁済期の到来前に債権を現金化する」場合です。

譲渡人は、事業上の資金繰りなどの関係で、債権の弁済期を待たずに債権を現金化したいと考えます。

これに対して譲受人は、資金力に余裕があり、かつ債権回収の見込みが十分あると考えるため、債権を額面よりも安く買い取ったうえで、額面どおり回収して利ザヤを得ることを目論むのです。

いわゆる「ファクタリング」と呼ばれるサービスは、基本的にこのような意図・仕組みによって運営されています。

2-2. 債務不履行となった債権を安価で売却する

債務不履行が発生した債権は、そのまま貸倒れになるリスクがあるため、実際の価値は額面よりもかなり低く評価されます。

譲渡人としては、債権回収の手間とコストをかけたくないので、安くてもいいから、早い段階で誰かに債権を買い取ってほしいと考えています。

その一方で譲受人は、債権回収のノウハウを生かして回収を成功させ、より多くの利ザヤを得られるという期待の下、譲渡人から「不良債権を買い取る」のです。

債権回収業者が取り立てのために債権を買い取る場合は、このパターンに該当します。

2-3. 債権を担保として形式的に移転する(債権譲渡担保)

債権譲渡の体裁をとりつつ、実質的には債権を担保として提供するという取引も、金融の世界を中心に行われています。

このような取引(または担保権)を「債権譲渡担保」といいます。

債権譲渡担保の意図で債権の名義を変更した場合、債権に関する権利が完全に移転するのではなく、担保権としての権利のみが移転されます。譲渡担保権の主な内容は、以下のとおりです。

  • ①被担保債権に債務不履行が生じた場合や、その他契約上定められた事由が発生した場合に、初めて譲渡担保権を行使できる
  • ②譲渡担保権の行使に基づく債権回収によって得られた金銭は、被担保債権の弁済に充当する
  • ③弁済充当後に、回収した金銭の残額がある場合には、譲渡担保権設定者(債権の譲渡人)に返還する

債権譲渡担保は、通常の債権譲渡とは異なるイレギュラーな取引なので、詳細は割愛しますが、このような債権譲渡の活用方法もあることを頭に置いておきましょう。

3. 債権譲渡を行う際の手順・方法を簡単に解説

債権譲渡を行う場合の基本的な方法は、わかりやすく簡単にいうと以下のとおりです。

3-1. 債権譲渡契約書を締結する方法

まずは、債権譲渡の内容を取り決めるため、債権譲渡契約書を締結します。

具体的には、以下の内容を含む契約条件を、債権譲渡契約書の中に規定しておきましょう。

①譲渡の対象とする債権の内容
・債権者名
・債務者名
・額面金額
・弁済期
・発生原因となった契約の名称
②決済の日時
③決済の前提条件
④契約解除の条件
など

債権譲渡契約書は、債権譲渡の取引条件を厳密に定める重要な書面です。そのため、債権譲渡契約書を作成する際には、弁護士への相談をお勧めいたします。

3-2. 譲渡代金の支払い・債権の移転を同時履行で行う

債権譲渡契約書の締結後、契約中に定められた決済日において、債権譲渡を実行します。

譲渡人は債権を譲受人に移転し、譲受人は譲渡人に債権譲渡代金を支払いますが、契約上別段の定めがない限り、両者は同時履行となります(民法533条)。

なお、債権譲渡契約において決済の前提条件が定められている場合、すべての前提条件を満たして初めて、債権譲渡が実行されます。

3-3. 債権譲渡の対抗要件を備える

債権譲渡の実行後、譲受人は「第三者対抗要件」を備える必要があります。

譲受人が第三者対抗要件の具備を怠っていると、譲渡人が別の第三者に債権を「二重譲渡」し、結果的に譲受人が債権を失ってしまうことになりかねません。

そのため、債権譲渡が実行されたら、速やかに第三者対抗要件を具備することが重要です。

一般的には、債権譲渡契約書の中で、債権譲渡の実行と同日付で第三者対抗要件具備の手続きを行う旨が規定されます。

4. 債権譲渡の対抗要件を具備する方法

債権譲渡の対抗要件を具備する方法は、民法および動産・債権譲渡特例法※において、以下の3パターンが定められています。

※正式名称:動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律

4-1. 譲渡人の債務者に対する通知

1つ目は、譲渡人が債務者に対して、債権譲渡を行った旨を通知する方法です(民法467条1項)。

この通知を確定日付のある証書によって行うことで、譲受人が第三者対抗要件を具備することができます(同条2項)。

譲渡人の債務者に対する通知を対抗要件としている趣旨は、「債務者の認識をもって、債権譲渡の事実を公示する」と表現されることがあります。

つまり、「真の債権者が誰であるかは、債務者に聞けばわかる」という状態を確保するということです。

債権譲渡によって権利を失う譲渡人が、自ら債務者に対して通知を行えば、債務者から見た債権譲渡の信ぴょう性が高まると考えられるため、かかる通知が債権譲渡の対抗要件として認められています。

4-2. 債務者の承諾

対抗要件具備の2つ目の方法は、債権譲渡に関して債務者が承諾をすることです(民法467条1項)。

この承諾を確定日付のある証書によって行うことで、譲受人が第三者対抗要件を具備することができます(同条2項)。

債権譲渡が行われた場合、対抗要件具備の前後で、旧債権者と新債権者のどちらに弁済すべきかが異なります。

債務者にとっては、早く弁済先を確定させてほしいというニーズがあります。

そのため、債務者自ら承諾の通知を行うことで、債権譲渡の対抗要件具備を認め、新債権者を弁済先として確定することになっているのです。

4-3. 債権譲渡登記(法人による債権譲渡の場合のみ)

法人が金銭債権を譲渡する場合に限り、債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記をすることで、第三者対抗要件具備の効果が発生します(動産・債権譲渡特例法4条1項)。

債権譲渡登記による第三者対抗要件具備が認められているのは、債権譲渡の事実を債務者に知らせず、秘密裏に債権を譲渡したいという金融上・経営上のニーズがあるためです(いわゆる「サイレント方式」)。

債務者には債権譲渡の事実を知らせないわけですから、債権譲渡登記によって発生するのは、あくまでも第三者対抗要件具備の効果のみであり、債務者対抗要件は具備されません。

債務者対抗要件を具備するためには、民法の規定に従い、別途譲渡人の債務者に対する通知または債務者の承諾が必要となります。

5. 2020年4月施行・民法改正|債権譲渡制限特約の効力が変更に

2020年4月1日より施行された改正民法では、債権の譲渡制限特約に関するルールが変更されました。

譲渡制限特約(または譲渡禁止特約)とは「債権の譲渡を制限(または禁止)することを内容とする、債権者・債務者間の合意」を意味します。

改正前の旧民法では、譲渡制限特約が付された債権について、制限・禁止に違反して行われた債権譲渡は原則無効とされていました。

しかし、このようなルールの下では、譲渡制限特約付き債権の流動性が著しく阻害され、債権の価値が下がることが問題視されていました。

そこで、改正後の現行民法では、譲渡制限特約が付された債権であっても「債権譲渡は有効である」旨が規定されました(民法466条2項)。

そのうえで、譲受人が譲渡制限(禁止)の事実について知り、または重大な過失によって知らなかった場合には、債務者は譲受人に対する弁済を拒むことができるとされています(同条3項)。

なお、譲受人の悪意または重過失を理由として、債務者が譲受人に対する弁済を拒否した場合、譲受人の取得した債権が宙ぶらりんになってしまいます。

この場合、譲受人が債務者に対して、譲渡人に対する弁済を行うように催告し、相当の期間内に履行がない場合には、債務者に対する債権の取り立てが可能となります(同条4項)。

6. まとめ

債権譲渡について方法や対抗要件、民法改正についてわかりやすく解説致しました。

債権譲渡は、債権を早期に現金化したい譲渡人のニーズと、債権を額面よりも安く買い取って利益を得たい譲受人のニーズがマッチして行われる取引で、債権回収の場面でよく活用されています。

債権譲渡を法的に有効な形で行うためには、きちんと債権譲渡契約書を締結するとともに、民法などで定められた対抗要件具備の手続きを確実に行うことが大切です。

債権譲渡に関する取引をご検討中の方は、一度弁護士までご相談ください。

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