下請法上の支払い期日を解説|下請代金はいつまでに支払わなければならないか

元請け・下請けの関係においては、元請けである会社が下請けである会社から成果物の納品を受けても、なかなか下請代金の支払いを行わないケースも残念ながらしばしば見受けられます。

下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)が適用される取引の場合、下請代金の支払いには法定の支払い期日が設けられています。

そのため元請け会社(親事業者)としては、下請法の規定に違反しないように、適切な期間の範囲内に下請代金の支払いを行わなければなりません。

この記事では、下請法に定められた下請代金の支払い期日について、法律上の観点から詳しく解説します。

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1. 下請法上の下請代金の支払い期日に関するルール

まずは、下請法に定められている下請代金の「支払い期日に関するルール」を押さえておきましょう。

給付の受領・役務の提供から60日以内に支払う必要がある

下請代金の支払い期日は、親事業者が下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、役務の提供が行われた日)から起算して60日以内の期間内で、かつできる限り短い期間内で定めなければならないものとされています(下請法2条の2第1項)。

この規定に違反して、給付の受領・役務の提供から60日を超える期間後の支払い期日が設定されたとしても、給付の受領・役務の提供から60日目が支払期日とみなされます(同条2項)。

なお、下請代金の支払い期日が定められなかったときは、給付の受領・役務の提供があったその日に下請代金を支払わなければなりません(同条2項)。

支払遅延は下請法上、親事業者の禁止行為

支払い期日が過ぎたのに下請代金を支払わない行為は、支払遅延として、下請法上親事業者の「禁止行為」とされています(下請法4条1項2号)。

また、親事業者は支払い期日において下請代金を支払う義務を負っているのに、これを怠ったことになるため、「民法上の債務不履行」(民法415条)にも該当します。

下請法違反・債務不履行に該当することによる法的な効果については、後で解説します。

なお、支払い遅延以外にも下請法違反行為は存在します。下記ページを併せてご参照ください。

支払遅延に該当する行為とは?

上記で解説した下請法のルールを踏まえると、下請法上、下請代金の支払遅延に該当する行為の例としては、以下のような場合が挙げられます。

①給付の受領・役務の提供から60日以内の支払い期日が定められたケースで、その支払期日までに下請代金を支払わない場合
②給付の受領・役務の提供から60日を超えた支払い期日が定められたケースで、給付の受領・役務の提供から60日以内に下請代金を支払わない場合
③支払い期日が定められていないケースで、給付の受領・役務の提供があったその日に下請代金を支払わない場合
④月単位の締め切り制度をとっているケースで、締め切り後30日に支払期日を定めていないため、給付の受領・役務の提供から60日目までに下請代金が支払われない場合(例:「毎月末日納品締め切り、翌々月10日支払」の場合、5月1日に納品した成果物の下請代金は7月10日に支払われる)
⑤検収を要する月単位の締め切り制度をとっているケースで、検収に時間を要したため、給付の受領・役務の提供から60日目までに下請代金が支払われない場合(例:「毎月末日検収締め切り、翌月末日支払」のケースで、5月20日に納品された成果物が6月1日に検収完了となった場合、下請代金は7月31日に支払われる)
⑥支払い期日が金融機関の休業日に当たったケースで、親事業者と下請事業者の間で特に合意していないにもかかわらず、親事業者が勝手に翌営業日まで支払いを延ばした場合
⑦手形を交付することによって下請代金を支払ったケースで、下請事業者が金融機関において手形の割引を受けられない場合

支払い期日までに下請代金を支払えなかった場合はどうなる?

親事業者が下請事業者に対して、支払い期日までに下請代金を支払わなかった場合、①下請法違反および②民法上の債務不履行の2つに該当するのはすでに解説したとおりです。

ここでは、下請法違反と民法上の債務不履行の効果について解説します。

公正取引委員会による勧告などの対象になる

支払遅延などの下請法違反の行為が認められる場合、公正取引委員会は、親事業者に対して違反行為を是正するための勧告を行います(下請法7条1項)。

公正取引委員会の勧告を受けた親事業者は、勧告の内容に従って支払いサイトを見直すなど、下請法違反の状態を是正することが求められます。

また、支払遅延が恒常的に発生しているなど、下請法違反の状態を是正して取引を公正化する必要性が高いと認められた場合には、公正取引委員会から報告を求められたり、検査が行われたりする場合もあります(下請法9条)。

もし公正取引委員会からの報告要求を無視または虚偽報告を行ったり、検査を拒否・忌避したりした場合には、いずれも50万円以下の罰金に処される可能性があるため注意が必要です(下請法10条から12条)。

遅延損害金が発生する

民法上の債務不履行に該当することとの関係では、「遅延損害金」の発生が問題となります。

遅延損害金とは、金銭債務が不履行となった場合の損害賠償金をいいます。

遅延損害金の額は、支払い期日における法定利率によって定められます(民法419条1項)。

現行民法上は、法定利率は年3%とされています(民法404条2項)。

ただし、親事業者と下請事業者の間で、遅延損害金に関する約定利率が別途定められている場合には、約定利率の定めが優先されます(民法419条1項)。

親事業者が下請代金の支払日を設定する際の注意点

親事業者が下請事業者に対して取引を委託する場合には、業務委託契約の中で下請代金の支払い期日を決めることになります。

しかし、下請法のルールをしっかり踏まえた上で支払いのルールを決めないと、知らないうちに下請法のルールに違反していたという事態が発生しかねません。

以下では、親事業者が下請代金の支払日を設定する際、見落としがちな注意点を解説します。

下請法上の支払い期日の起算日は「給付の受領日(役務の提供日)」

下請法上、下請代金の支払い期日は、あくまでも「給付の受領日(役務の提供日)」から起算して60日以内に支払うべきとされています。

この「給付の受領」または「役務の提供」については、親事業者が下請事業者から受ける給付(役務)の内容について検査をするか否かを問わないとされています(下請法2条の2第1項)。

つまり、検収が完了したかどうかではなく、あくまでも下請事業者から成果物または役務を受け取った日が基準となることに注意が必要です。

検収日を基準として支払日を設定する場合は注意

以上のことから、検収日を基準として支払日を設定する場合には要注意です。

たとえば下請代金を「検収月の翌月末日払い」としているケースで、6月20日に納品された成果物の検収が7月1日に完了したとします。

この場合、ルールに従うと下請代金の支払いは8月31日になりますが、納品があった6月20日から起算すると、60日以内の期間制限をオーバーしてしまいます。

このような事態が生じないようにするためには、

・「納品日を基準」として下請代金の支払日を設定する
・検収のスピードを早めて支払い期日に間に合わせる
・検収が遅れた場合には前倒しで下請代金を支払うように特例を定める

などの対応を取る必要があるでしょう。

すべての納品に対して60日以内に下請代金が支払われるようにする

納品日を基準として支払日を設定するとしても、すべての納品に対して60日以内に下請代金が支払われるようなルールになっているかどうかについては、十分に確認する必要があります。

特に、月単位で納品締め切りを設けているケースでは、締め切り日から30日以内に支払日を設定するようにしましょう。

仮に「月末納品締め切り、翌々月10日払い」などと、締め切り日から30日以上が経過した日を支払い日に設定してしまうと、月の前半に納品された成果物については、60日以内に下請代金が支払われない事態が発生する場合があるので注意が必要です。

親事業者から支払い期日どおりに支払いを受けられない場合には弁護士に相談

親事業者が支払い期日どおりに下請代金を支払わない場合、親事業者の行為は下請法違反および債務不履行に該当します。

しかし、下請事業者としては、普段からの力関係などを気にしてしまい、親事業者に対して権利の主張をすることが難しいと感じる場合もあるでしょう。

その場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、親事業者に対してどのような態度で交渉するのが良いかということも含めて、専門的なアドバイスを提供してくれます。

また、いざ親事業者との間で紛争が発生してしまった場合にも、弁護士に依頼をしておけば、必要な手続きをスムーズに進めることができるので安心です。

親事業者の支払遅延にお悩みの場合は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

以上に解説したように、下請代金の支払い期日は、納品または役務の提供から60日以内と下請法上決まっています。

もし親事業者による支払遅延が恒常的に発生している場合には、下請法違反と債務不履行に該当しますので、下請事業者としては親事業者に支払いサイトの見直しを求めましょう。

もし直接親事業者と交渉するのは気が引ける、仕事を回してもらえなくなるのが恐ろしいと心配になってしまう場合には、対応方法について弁護士に相談することをおすすめします。

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