男女雇用機会均等法の2020年の改正ポイント|セクハラに関する法改正

労働問題

昨今、職場におけるセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」といいます)が大きな問題になっています。

現在では、法律上も事業主に対してセクハラの防止策を取ることが求められています。

セクハラ防止策は、1999年4月、男女雇用機会均等法(正式名称:雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保等に関する法律。以下「均等法」といいます)により、事業主に対して女性へのセクハラ防止措置の義務化が規定されたのが始まりです。

その後、2007年4月には女性だけではなく男性も対象に加えたセクハラ防止措置が義務化されました。そして今般2020年6月に施行された改正均等法においては、セクハラ防止対策がさらに強化されています。

この記事では、2020年6月に施行された改正均等法におけるセクハラ防止対策について解説します。

  1. 2020年6月施行の改正均等法におけるセクハラに関する法改正の内容
    1. 不利益取扱いの禁止(均等法11条2項)
    2. 他の事業主への協力義務(均等法11条3項)
    3. セクハラ防止の啓発活動とセクハラに必要な注意を払うべき努力義務(均等法11条の2)
  2. 厚生労働省のセクハラ指針
    1. 用語の定義1
    2. 用語の定義2|取引先・患者・学校からのセクハラについて
    3. 雇用管理上取るべき措置
      1. ①事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
        1. セクハラの内容およびセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること
        2. セクハラの行為者について厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則などに規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること
      2. ②相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
        1. 相談窓口をあらかじめ定める
        2. 相談窓口担当者が適切に対応できるようにする
      3. ③ 職場におけるセクハラへの事後の迅速かつ適切な対応
      4. ①相談の申出があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認すること
      5. ②事実確認ができた場合、適正な措置を行う
      6. ③再発防止に向けた措置を講ずること
      7. ④上記3つの措置と併せて講ずべき措置
      8. 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること
      9. 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
  3. まとめ

2020年6月施行の改正均等法におけるセクハラに関する法改正の内容

2020年6月施行の改正均等法におけるセクハラに関する法改正としては、大きく分けて次の3つの事項が追加されることとなりました。

不利益取扱いの禁止(均等法11条2項)

事業主に対して、労働者がセクハラの相談を行ったことや、その相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、「解雇その他不利益な取扱い」を労働者に足しいて禁止する旨の規定が定められました。

他の事業主への協力義務(均等法11条3項)

また、事業主が他の事業主からセクハラ防止措置について必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならないという「協力義務も規定」されました。

セクハラ防止の啓発活動とセクハラに必要な注意を払うべき努力義務(均等法11条の2)

事業主に対して、労働者が他の労働者に対して注意を払うよう「研修の実施その他の必要な配慮」をすべきことが規定されました。

また、事業主と労働者双方に対して、セクハラに対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう努力する義務も規定されました。

厚生労働省のセクハラ指針

雇用管理上取るべき措置としては、厚生労働省の「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下「指針」といいます)に詳しく定められています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000133451.pdf

そして、今般の均等法改正を受けて、指針の内容も一部改正されています。

事業主としては、自社におけるセクハラ対策を検討する際には、指針の内容を十分に踏まえて方針を立てる必要がありますので、この機会に指針の内容やポイントを押さえておきましょう。

以下では改正内容をふまえて指針の内容について解説します。

用語の定義1

指針では、まず用語の定義が明らかにされています。

特に以下の定義を見れば、どのような行為がセクハラとして規制の対象となっているかがわかります。

「セクハラ」とは、事業主が職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により労働者がその労働条件につき不利益を受け、または性的な言動により労働者の就業環境が害されることをいいます。

「職場」とは、事業主が雇用する労働者が「業務を遂行する場所」を指します。

つまり、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅など、労働者が業務を遂行する場所であればすべて「職場」に含まれます。

「労働者」とは、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者のすべてを指します。

用語の定義2|取引先・患者・学校からのセクハラについて

次に「性的な言動」とは、性的な内容の発言および性的な行動を指します。

この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布することなどが含まれます。

また「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布することなどが含まれます。

そして、今般の指針の改正により、性的な言動を行う者には、労働者を雇用する事業主、上司、同僚に限らず、取引先などの他の事業主やその雇用する労働者、顧客、患者やその家族、学校における生徒なども該当し得ることが明記されました。

つまり事業主は、自社の社員に対して、同僚のみならず取引先の従業員などに対してもセクハラを行わないように指導を行う必要があります。

雇用管理上取るべき措置

指針では、事業主は以下の4つの措置をとるべきことが明記されています。

①事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

事業主は、職場におけるセクハラを防止するため、事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発に関して、次の措置を講じなければならないものとされています。

セクハラの内容およびセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

たとえば、就業規則において、職場におけるセクハラがあってはならない旨の方針を規定し、あわせて職場におけるセクハラの内容と性別役割分担意識に基づく言動がセクハラの原因や背景となり得ることを労働者に周知・啓発することがあげられています。

労働者に周知、啓発する方法としては、社内報、パンフレット、社内ホームページなどに記載し、配布することなどが考えられます。

セクハラの行為者について厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則などに規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

たとえば、就業規則にセクハラに対処する規定がない場合には、就業規則において、職場でセクハラを行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発することが考えられます。

また、就業規則にセクハラに対処する規定がすでにある場合には、職場におけるセクハラを行った者は、就業規則において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発することが考えられます。

②相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

事業主は、労働者からのセクハラなどに関する相談に対して適切かつ柔軟に対応する体制を整備するため、次の措置を講じなければならないものとされています。

相談窓口をあらかじめ定める

たとえば、相談に対応する担当者をあらかじめ定めておいたり、労働者に対して窓口となる部署または担当者を周知することが考えられます。
なお、今般の改正により、セクハラやマタハラ、パワハラなど、複数のハラスメントが同時になされうることから、ハラスメントの相談窓口を一体化し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましいとされています。

相談窓口担当者が適切に対応できるようにする

現実にセクハラが生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、セクハラに該当するか否か判断が微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすることが求められます。

具体的には、窓口担当者と人事とが上手く連携を図る仕組みを作ることなどがあります。

また、あらかじめ作成したマニュアルに基づき対応することも考えられます。

③ 職場におけるセクハラへの事後の迅速かつ適切な対応

事業主は、職場におけるセクハラに関する事実関係の迅速かつ正確な確認、および適切な対処を行うため、次の措置を講じなければならないものとされています。

①相談の申出があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認すること

たとえば、相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会等が、相談者とハラスメントの行為者の双方から「事実関係を確認」することが挙げられます。

その場合に、お互いの主張が一致しない場合には、第三者からも事実関係を聴取するなどの措置を講ずることも必要です。

さらに、事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたものの、確認が困難な場合は、均等法18条に基づく調停の申請を行うなど、中立な第三者機関に紛争処理を委ねることも考えられます。

②事実確認ができた場合、適正な措置を行う

被害者と行為者の間に下記の措置を講ずることが挙げられます。

  • 関係の改善の援助
  • 配置転換
  • 行為者の謝罪
  • 労働条件上の不利益の回復
  • メンタルヘルス不調への相談の対応

また、均等法18条に基づく調停など、中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者や行為者に対して講ずることもできます。

さらに、就業規則に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずることも考えられます。

③再発防止に向けた措置を講ずること

事実関係が確認できた場合だけではなく、事実関係が確認できなかった場合であっても同様の措置を講じることが必要となります。
たとえば、事業主のハラスメントの行為者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページなどに改めて掲載し、配布することが考えられます。
また、労働者に対して職場におけるセクハラに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施することも考えられます。

 

④上記3つの措置と併せて講ずべき措置

上記3つの措置を講ずるに際しては、事業主は併せて次の措置を講じなければならないものとされています。

相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること

プライバシーを保護するために必要な措置としては、相談者・行為者のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすることが考えられます。
また、相談者・行為者のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うことも考えられます。

相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

就業規則において、労働者が職場におけるセクハラに関し相談をしたこと、または事実関係の確認に協力したことを理由として、労働者が解雇などの不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすることが考えられます。

周知・啓発の方法としては、社内報、パンフレット、社内ホームページなどに記載し、労働者に配布することが考えられます。

まとめ

事業主の方にとってセクハラ問題は、職場秩序を乱したり、業務を阻害したりして事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、指針の内容を踏まえた適切なセクハラ防止対策を講ずることが強く求められます。

自社におけるセクハラ対策をどのように講じるかを検討している事業主の方は、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

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